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Azul図書室 今まで読んだ本の「自己の記録」であり、誰かの目に留まり手にとって読んで頂けたら、さらに嬉しいとても私的な「ブックコーナー」でもあります。時間つぶしにお立ち寄りください。
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国書刊行会の「新しい台湾の文学」シリーズは、いつも新刊を心待ちにしている。「台北ストーリー」「古都」「鹿港から来た男」「ヴィクトリア倶楽部」「客家の女たち」「自伝の小説」「荒人日記」「星雲組曲」、そしてこの「台北人」。2000年代の私の読書世界を彩った本たちである。これらの台湾文学シリーズを手に取るたび、台湾の、中国の、そして日本の新しい顔を、私は知っていく。「台北人」は、戦後大陸から故郷を追われて台北に生き延びた「外省人」たちの物語。「外省人」を、「悲情城市」的にのみ見ることはできない。このシリーズ、英米文学翻訳ブームのような華やかさはないけれど、ぜひぜひ今後も、台湾の素晴らしい作品を届け続けていただきたいものです。

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映画「冬冬(とんとん)の夏休み」の原作。なぜ「安安」が「冬冬」になったか?っていうのは分からない。

「冬冬(とんとん)の夏休み」は、台湾の巨匠、ホウ・シャオシェン監督の80年代の作品である。この原作を書いた朱天文さんは台湾で人気の女流作家だそう で、私も他に「台北ストーリー」「荒人日記」を読んだことがある。昔から、ホウ・シャオシェン監督と一緒に脚本を書いたりしていたそうなので、映画はこの 原作の細部まで、いやそれ以上に丁寧に作られていて、原作がノベライズではないかと思うくらい。

お話はとてもシンプルで、母親が出産間近なため、夏休みに田舎の祖父母の家に預けられる幼い兄妹の小さな成長物語、といった風情。

その中で、懐かしさを特に覚えるのが、祖父母と孫達の関係。大人たちは幼い子供たちが来たからといって、特に生活習慣を変えたりはしない。大人が決めた ルールを子供たちがやぶると叱るし、子供たちもやっぱりやりたいことはやりたいわけだから、大人の目を盗んでいろいろ悪さをする。けれど、祖父母(特に祖 父)に対して、子供たちは敬意を持っている。「認めて欲しい」という切ない気持ちも持っている。そしてまた、子供たちの純粋な思いや好意に、大人たちの色 のつきすぎた心が少し溶け出したりする。

そんな関係が懐かしい。私が幼い頃、祖父母は私たち孫を「猫可愛がり」はしなかった。孫の言いなりには、絶対にならなかった。悲しいぐらい・・・。そうい えば、父が孫を叱り飛ばしているところをみたことがない。できないのだろうな。だから親以外の親族で怒鳴っているのは私だけ。ほほ。

そんな懐かしい思いと、日本の旧き農村に似た風景を感じながら読むと、さらにじわじわくる物語である。それをそのまま映像で味わうことができるのが映画「冬冬の夏休み」なのだ。


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